インドネシアの染織(イカット)
「括る」、「縛る」という意味のインドネシア語が語源となっている「イカット」。現在では絣を意味する世界共通語として広く用いられている語句です。その背景には、インドネシアが世界最大の絣の宝庫であったことがあげられます。広大な熱帯の海域に浮かぶ一万七千余りのインドネシアの島々には二百以上もの異なる言語を話す民族が住み、それぞれ独自の染織文化を生み出してきたからです。
そのようなイカットの中から木綿で技法の違うものを四種選んでみました。
花幾何学文経緯絣(全体拡大画像)
19C 188cm×44cm
ヒンドゥー教文化の伝統が今なお生き続けるバリ島。中でも先住民の村のひとつであるティンガナン村は東南アジアで唯一の経緯絣を織る村として知られている。ここで織られた経緯絣はグリンシンと呼ばれ主に村人の腰布、腰帯、胸布、肩掛けといった儀礼用の衣装に使用されている。また村から流出した一部のグリンシンは魔除けや病気の治癒のための呪術的な力を持った布として、もてはやされました。 |
19C 125cm×78cm
バリ島の南東に隣接するヌサ・ぺニダ島の緯絣である。緯糸のみが部分的に染め分けられて絣糸として使用されており、織りあがったイカットの模様は緯糸のみによって構成されている。
従って先に紹介した経緯絣(グリンシン)では、すべての模様が経糸、緯糸のそれぞれの染め分けられた部分が完全に重なり合って構成されるため、緯絣、経絣とは軟べものにならない至難の技術が必要なのである。 |
19C 290cm×144cm
バリ島の東に浮かぶヌサ・トゥンガラ諸島、スンバ島スンバ族の支配階級の腰巻である。黒茶地には首架文と人物文、そして上下の赤地には馬や鹿などの動物文があらわされている。首架文は戦いで討ち取った敵の首を並べた戦勝の祭儀の祭壇をあらわし、その両側の人物文は戦士を意味している。この文様は戦いの勝利を祈念する文様であり、スンバ島では20世紀初頭まで戦いの度に首狩が行なわれていたと伝えられている。 |
19C 194cm×128cm
ヌサ・トゥンガラ諸島の東端に位置するティモール島はこの地域最大の島である。ティモール島のイカットは主に経絣、経糸紋織、緯糸紋織などを併用したものが少なくない。これを見ていただくとおわかりのように、緯糸紋織とは色糸を文緯とした縫取織である。これらの織物はいずれも主に衣装として用いられている。経絣は最も一般的なものであるが、縫取織は支配階級において多く用いられていた。
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